大阪市をよくする会

大阪府・市の啓発動画 『ギャン太郎』 配信停止へ

 大阪府・市が作成した「啓発動画」が内容に重大な問題があったため配信停止となっています。その内容について新川眞一大阪いちょうの会事務局次長・司法書士からのレポートを掲載します。

 

大阪府・市の啓発動画 『ギャン太郎』 配信停止へ
「IR・カジノは合法です」のささやき

 

 大阪府・市は1月28日、高校生や大学生向けに制作した違法ギャンブルの啓発アニメ動画(5分超)がSNS上で批判を浴び一時配信停止したと発表しました。これにより府・市の依存症対策への問題が明らかになりました。表現の不適切さや被害者を否定的に描く比喩、当事者への二次被害の可能性を高めるため、専門家や当事者の意見反映など、制作前の検証や倫理審査が不十分だったことが示唆されます。
看過できず、意見表明をさせていただきます。

大阪いちょうの会 事務局次長
大阪府ギャンブル等依存症対策会議委員

“text-align: right;”>  司法書士     新川眞一

表現や制作過程など5つの問題点
1 高校生向けリーフの教訓が生かされていない

 

 大阪府が過去に作成した高校生向けリーフレット問題の教訓が生かされておらず、依存症対策を担うべき部署自らが誤った認識を広めてしまった点で重大です。2019年のリーフは「ギャンブルは金額と限度を決めて楽しむ」と記し、学校教育で「ギャンブルとのつきあい方」を教えることになるような内容が含まれており、その際の批判にもかかわらず今回の動画でも同様の問題が再現されたことは看過できません。

 

2 依存症への偏見と不理解

 

 特に今回の発信元が地域保健局(依存症対策を所管する部署)であったことは深刻で、対策が形骸化している印象を強めます。
 動画そのものは、ギャンブル依存を「病気」としてではなく個人の性格や意志の問題として扱い、被害者の人格を無視する偏見と無理解を露呈しました。ネット上の批判や医療関係者の指摘は、主人公を人間として扱わず、依存症を本人の根性で治るものとする誤った前提に基づく制作であることを明らかにしています。
 さらに重要なのは、ギャンブル被害がたばこや薬物と同様に事業者の営利活動によって生まれる「健康被害」であり「産業被害」である点ですが、動画はギャンブル施設や事業者の加害性に一切触れていません。これは、IRカジノ推進者が口先で依存症対策を語りつつも、施設誘致や規模の拡大を正当化する立場を変えないことと軌を一にするものです。

 

3 当事者・専門家の参画が必要

 

 制作委託のあり方も問題で、営利目的の大手広告代理店(博報堂)にそのまま発注した結果、当事者や自助グループ、医療関係者の意見が反映されないまま表層的な啓発になっています。
 本来であれば当事者団体や医療専門家を先に関与させ、監修を受けたうえで制作するべきであり、その順序を誤ったために「病を知っていても人を見ない」表現が生まれたと考えられます。今後は委託先や方法を見直し、当事者・専門家の参画を必須とすることが必要です。

 

4 IR・カジノ前提でなく、本気のとりくみを

 

 依存症対策そのものについても、本気の取り組みが欠けています。大阪府が策定した依存症支援センターの計画は、IRカジノ誘致を前提としたものであり、カジノの可否に左右されているため実現が遅れています。本来、依存症対策はIRの有無に関わらず迅速かつ抜本的に進められるべきであり、「IRが決まらないと本腰を入れない」という姿勢は誠実さを欠いています。依存症被害を減らすための具体的な人員や予算、実施時期を明確にすることが急務です。

 

5 わざわざ「違法」という理由
 そもそも賭博は刑法上 違法です

 

 最後に、動画や関連資料で「違法オンラインギャンブル」とわざわざ表記した点に懸念しています。
 現状、日本には免許制のカジノ事業者が存在しないため、カジノを「違法」と区別する表現は、将来夢洲IRに免許が与えられた場合に「例外的に合法」と解釈されうるリスクがあります。
 そもそも賭博行為は刑法上違法であるという大前提を踏まえれば、あえて「違法」を強調する意図は不明であり、将来的にオンラインギャンブルを合法化するために誘導的メッセージとして受け取られかねない点を問題視しています。

 

(配信停止された啓発動画の内容)

 

主人公の高校生「ギャン太郎」がスマホで「ラクして生きる人生見つけたかも」と違法ギャンブルに手を出して依存症になります。カウンセラーに相談、「本能に任せていたら『鬼』になってしまった」と、依存症患者を「鬼」と表現、また、ギャンブル依存が本人の精神や根性で治せるなど誤った認識があり、被害者への配慮が欠けていると多くの非難を招きました。