大阪市をよくする会

第1回教育シンポジウム(2021.7.11.)の動画・発言から

第1回教育シンポジウム(2021.7.11.)での保護者と教員の発言は次のとおりです。

大阪市在住の保護者の発言

 実施可能かの事前確認をせず「オンライン授業」を押し付け、学校と生徒の学校生活を大混乱させた松井市長は反省を!

 

 4月22日に大阪市教委育委員会から突然「オンライン授業」を行うと通達が出され、学校は大混乱に陥りました。26日からの実施で、土日を除き準備期間は1日だけという酷さでした。松井市長は大阪市内の小中学校の全生徒にタブレットを用意したと言いますが、充電器が届いていない、回線が足りずにつながらない、つながっても画像は乱れ声が途切れ るなど、まともにオンライン授業をできた学校はわずかです。

 

 テレビで放送された学校は教育委員会が事前にテレビ局に紹介していたオンラインが出来ることが分かっていた学校でした。各学校にはバラツキがあり、パスワードとIDをもらって通信確認をしただけのところ、1年生はこないだまで幼稚園ですからID・パスワードといっても分らないので結局プリント学習と国語の本を読むだけ、タブレットでNHKの教育番組を見るだけ、30分のみ接続できた、オンラインはチャレンジしたが出来ないので断念し1限目から通常の多面授業を行っていたなど、各学校バラバラでした。これが4月26日から約1か月も続いた、おかしな「オンライン」プラス「授業」の組み合わせの結果です。

 

 私の子どもの中学校では、午前のオンラインといっても30分2コマできたらいい方で、後は結局プリント学習でした。昼から給食を食べた後は、午前中のプリント学習の解説で、これを2コマのマスに入れるのは納得いかない状況でした。一番困ったのは先生たちだったのですが、出来る限りのことは準備期間がないなかで本当に頑張って頂いたと思います。

 

 松井市長と教委育委員会とも、双方向でオンライン授業が実施できるかの事前確認をせず、科学的根拠も調べずに、突然見切り発車したことにより、学びの格差が生じました。「府市一元化」を掲げていたのに、府は通常の対面授業でクラブ活動だけを停止、市内でも初めから教育委員会の指示に従わず通常授業を行っていた学校もあり、ダブルの格差が生まれました。受験を控えた3年生は、約1か月間ほとんど授業が進まず、今後の進路に影響が出る可能性があるのではと懸念しています。

 

 4月の中旬過ぎは、子どもたちが少し学校に慣れ、新しい友達もできるときです。学習の遅れだけではなく、生活リズムの乱れ・体力の低下・集中力の低下に影響が出ている子どもさんがいます。
 5月26日の市長会見で「オンラインがつながりにくいとか、途中で声が聞こえにくいとか、サーバーの許容量が問題になってるらしいので、許容量を上げるための協議をいま事業者としている」と発言されましたが、終わってから今ですか?としか言いようがありません。オンライン授業の結果の調査についての問いに対しては「必要ないんじゃないか、今後に向けて日々改善していく」と、何の調査もせず、知識のない人が教育現場に意見や命令をしてはいけないということを痛切に思いました。

 

 昨年の休校により、通常よりすごい早いスピードで授業がすすみ、子どもたちが理解できているかどうか先生たちは確認したいのに余裕なかったために進めるしかなかったのですが、現場の先生たちにこんな辛さがあり、子どもたちは大変な思いをしたのが判っているにもかかわらず、また今回このようなことが行われてしまいました。
 教育委員会には、1日でも早く通常授業に戻すよう毎日電話をかけましたが、でも教育委員会からは「現在調査中です」「上には言いにくい」といった残念過ぎる返答ばかりでした。格差を埋めるための補講の件も統一しないとバラツキが起きると提案してきましたが、各学校に任せるとのあいまいな返事でした。

 

 コロナ禍の中、制限され続ける学校行事、黙って前を向き一人で食べる給食、いろいろな面で制約される1年半、それでも子どもたちは頑張っています。
 通常授業が再開されたとき、先生たちは「やっと進める、やっと普通の授業ができる」と言われ、子どもたちも「やっとや!」「ほんとに長かった…苦しかった」と言っていました。
 〝教育を受ける権利である小中学校の9年間″は唯一の期間です。それを奪うことは許されません。人生の中で、大人になってからの期間というのは長くありますが、学生生活は限られた期間であり、大人になっていく上で人とふれあい、話し、ぶつかり合いながら日々成長しています。この大切な学生期間を二度と止めてはいけません。

 

 市長、教育委員会は今回のことを振り返って反省し、謝罪する義務があります。何事もなかったかのように終わらせるのではなく、自分たちが学んでほしいと思います。
 オリンピックが近づき、感染拡大が広まらないことを切に願います。これ以上、大人の都合で未来ある子どもたちを犠牲にすることは許されません。

 


現職教員の発言

 

 新学期を迎えたばかりの4月19日(月)、松井大阪市長は突然に「緊急事態宣言期間中は原則オンラインで授業する」と表明しました。3日後の4月22日(木)の教育委員会の通知文書では、「1・2時限目は家庭でICTを活用して学習、3時限中に登校して健康観察、4時限目に授業を行い、給食を食べて下校し、5・6限目は家庭で学習」という指示がだされました。

 

 大阪市の小中学校は2021年3月までにすべての児童生徒分にタブレットを配布済みでしたが、インターネット回線の整備が遅れており、30人程度のクラスで通信が止まってしまうことが現状でした。
 4月26日(月)から「短縮授業」が行われることになりマスコミ報道では、大阪市西区の本田小学校の様子が紹介され、多くの小中学校で「オンライン授業」ができているような印象を受けるような報道でしたが、実際のところは全く違いました。本田小学校は2013年度から「大阪市学校教育 ICT 活用事業」モデル校であり、長年ICT機器を活用した教育実践を行ってきた小学校です。そのような学校は大阪市内でほんの一握りです。

 

 大阪市内の多くの学校では、通信環境が整備されていないため、「双方向通信の接続テスト」を行政区24区ごとに割り当て時間を決めて、一週間にたったの「40分間」だけ「接続テスト」が行われました。
 私の勤務する学校では、通信速度を確保する為、「40分間」をさらに学年やクラスを分け1クラスあたり15分間程度しか「接続テスト」は行われませんでした。たった「15分間」でできることは、操作の確認と「じゃんけん」や「クイズ」などの5分間くらいでできる子どもたちとの交流です。「接続テスト」の時間に家に保護者がいなかったり、いきいき活動(放課後事業)や学童保育では「接続テスト」を実施しないとしている小学校もあったりして、全校児童・生徒の100%の「接続」はできませんでした。とても全ての児童生徒を対象とした「双方向のオンライン授業」ができるような状態ではありません。

 

 そのため、多くの小中学校では、家庭でのプリント学習が中心になりました。また、朝から8割が登校する学校もあれば、2割しか登校しない学校など、同じ区内でも学校や地域の対応が違っていたり、朝起きれずに生活が乱れてしまう児童生徒がいたりするなど、さまざまな問題が起こりました。また「オンライン授業」は、特別支援学級に在籍している児童のことは全く考えていません。

 

 これが大阪市で行われていた「オンライン授業」の実態です。

 

 5月17日(月)に松井市長が「学校再開」を表明し、約1か月間の授業の遅れを残し、5月24日(月)から平常通り再開されることになりました。

 

子どもと教職員の声を紹介します。(学校名は発言では非公開)

 

K小学校、2年生
→2クラスで8人しか登校していない。朝の2時間はプリント学習か「まんが日本昔話」のアニメを見ている。

 

A小学校、教員
→短縮期間には、一日2時間しか授業ができないのにその内、1時間を使って2年生に「接続テスト」のためのタブレット操作の授業を行った。

 

 「地方教育行政法」では「第21条 (教育委員会の職務権限)」において「5 教育委員会の所管に属する学校の組織編制、教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導に関すること。」と規定しています。「オンライン授業」をするのかしないかなど、各学校の「教育課程」はその学校園を所管する「教育委員会」が、教育長を含め6人の教育委員の話し合いをもとに方針を出し、最終的には各学校でどのように実施していくかを判断します。大阪市長が思いつきで決められるものではありません。

 

 昨年4月、入学式の前日の4月6日(月)に教育長が「入学式は行える」との通知を出していたが、その日の夜松井市長のツイッターによる発言での入学式が延期されました。また6月1日からの学校再開後は、午前中登校と午後登校の間に2回の給食を実施しましたが、その方針は松井市長が5月21日に記者会見の発言からでした。このように、松井市長の突然の発言と報道により、学校現場の方針が大きく変えられることがこれまでも何度もありました。これらの行為は「地方教育行政法」違反であり、首長の教育介入による違法行為です。

 

 この4月の突然の「オンライン授業」については、木川南小学校校長をはじめ、多くの教職員や保護者、大阪市民が怒りの声をあげました。松井市長の「違法行為」を広く市民に知らせ、子どもたちや教職員に、さらなる苦しみをあたえる「維新市政」を替えることが求められています。